食材イロイロ~魚~ にしん

にしんの旬

2月に入るとスーパーの鮮魚コーナーには、生のにしんが並びます。

にしんは、産卵場所や回遊範囲によって、系群に分かれます。北海道・サハリン系群は3月下旬~6月下旬、石狩湾系群は1月下旬~5月上旬が産卵のため、北海道にやってきます。
そんなことからにしんが来ると春が近いということで、「春告魚」とも呼ばれています。

北海道産の生のにしんを手頃な値段で多く見かけるのは、だいたい2月~4月の上旬くらいが多いです。

にしん

にしんの漁獲量

数十年前は、生のにしんを見かけることがほとんどありませんでした。しかも北海道産ではなく、ロシアなどの外国産が多かったように思います。しかし近年では、漁業者による稚魚の放流がされており、徐々に水揚量が増え始めてきました。

北海道では、明治末期から大正にかけて漁獲量が多く、100万t近くの漁獲量あったという記録があります。北海道の日本海側沿岸をドライブしていると、昔の「にしん小屋」や「にしん御殿」跡地を見かけます。にしんで財を成した人が多くいたことがうかがえます。

北海道のホームページにある水産統計によると、にしんの漁獲量は、2016年では7,450t、2017年は9,064tでした。昔の100万t近くも獲れていたことに比べると大きな差がありますね。
また、100万tの漁獲量とは、どのくらいかと思い調べてみると、北海道の全漁獲量は、2017年で、85万4千tでした。
1年間の北海道の全漁獲量よりもにしんが獲れていた時代があったなんて、なんか驚きます。
ちなみに、2018年の水揚げは3年ぶりに100万tを超えて、101万8千tだったそうです。

2018年は回復しましたが、大事な水産資源を大切に料理したいなと思いました。
子どもの頃はあまり生のにしんは馴染みがなく食べる機会が少なかったのですが、現在は9割以上が北海道で獲れているので、旬の季節はいろいろ料理して楽しみたいです。

にしんの選び方

にしんを選ぶときには、

身が銀色で、うろこがしっかりついており、身がしまっているもの、腹の部分に張りがあるものを選べるといいですね。

目が乾いていないもの(つやがある)、えら蓋の表面が赤くにじんでいないものを選びましょう。水揚げするときに目が赤くにじみやすいそうなので、目よりもえら蓋に注目です。

新鮮なものは、刺身やマリネなどで食べることも可能ですが、アニサキスなどの問題もあり、最近では購入するときにお勧めされません。アニサキスは酢や油では死滅せず、60℃、1分以上の加熱、または-20℃、24時間以上の冷凍で死滅します。家庭の冷蔵庫は-18℃以下という設定になっているので、家庭で冷凍したからといって安心できません。
刺身やマリネ専用に加工されたものが安全ですね。

にしんの保存方法

一尾の魚は基本的に、買ってきたらすぐに下処理をします。

頭、内蔵、うろこ等を除いてよく洗い、水けをしっかり拭いて一尾ずつラップでくるみ冷蔵します。

冷凍する場合は、三枚におろして、氷水にくぐらせてから、ラップで1枚ずつくるみ、冷凍します。

午前中に買ってきて、夕食に塩焼きにする場合でも、内臓は出すなどの下処理をすることをおすすめします。
その後、塩をまぶして、キッチンペーパーでくるみ、ラップをして冷蔵庫に入れておきます。
余分な水分が出て、にしんの身がしまり、おいしい焼き魚ができます。

にしんを使った料理

にしんは、塩焼きがおすすめですが、煮付けなどでも食べられます。ちょっとアレンジして、にんにくやハーブと一緒に焼くと風味が出ておいしいです。

にしんは、生のにしんだけでなく、身欠き鰊や糠にしんと加工されて使われることも多いです。

身欠きにしん

身欠き鰊】頭と内臓をとってから乾燥させ、干物に加工したもの。江戸時代は、冷凍や冷蔵の技術や北海道から本州へ運ぶ輸送技術が発達していなかったため、長期保存が可能な形として流通しました。

本乾という身欠きにしんは保存に最適です。水や米のとぎ汁で戻しますが、戻るまでに冬の北海道だと5日以上かかることもざらにあります。

そこで、頭と内臓をとって、3枚おろしにした、本乾のようにかちかちに乾燥させるのではない、一夜干し的なソフト干物としての身欠きにしんもあります!戻さずにすぐに使えるので、身欠きにしん戻すの忘れた!と思っても大丈夫。

身欠きにしんは鰊の甘露煮やにしん漬、昆布巻きなど広く利用されています。

糠にしん

糠にしん】容器に、にしんを敷き詰め米糠と塩を振りかけ漬け込む。そのままでは塩分濃度が濃いため、焼いて食べる場合は、塩抜きをする。北海道の郷土料理である三平汁に欠かせない存在です。

にしんの栄養

七訂食品成分表と文部科学省の食品データベーズによると、可食部100gあたりの栄養価は、下記の通りです。

頭、内臓、骨、ひれ等は除いた栄養価です。

可食部100g当たり にしん   身欠きにしん
エネルギー 216 246 kcal
水分 66.1 60.6 g
たんぱく質 17.4 20.9 g
脂質 15.1 16.7 g
炭水化物 0.1 0.2 g
灰分 1.3 1.6 g
ナトリウム 110 170 mg
カリウム 350 430 mg
カルシウム 27 66 mg
マグネシウム 33 38 mg
リン 240 290 mg
1 1.5 mg
亜鉛 1.1 1.3 mg
0.09 0.1 mg
マンガン 0.02 0.04 mg
レチノール 18 0 μg
β-カロテン当量 0 0 μg
ビタミンA(レチノール活性当量) 18 0 μgRAE
ビタミンD 22 50 μg
ビタミンE 3.1 2.7 mg
ビタミンK 0 0 μg
ビタミンB1 0.01 0.01 mg
ビタミンB2 0.23 0.03 mg
ナイアシン 4 4.7 mgNE
ビタミンB6 0.42 0.21 mg
ビタミンB12 17.4 12.6 μg
葉酸 13 12 μg
パントテン酸 1.06 1.24 mg
ビタミンC 0 0 mg
飽和脂肪酸 2.97 3.46 g
一価不飽和脂肪酸 7.18 8.33 g
多価不飽和脂肪酸 2.39 2.18 g
コレステロール 68 230 mg
水溶性食物繊維 0 0 g
不溶性食物繊維 0 0 g
食物繊維総量 0 0 g
食塩相当量 0.3 0.4 g

栄養面では、不飽和脂肪酸やビタミンB12、ビタミンD、ビタミンEが多く含まれています。鉄分の補給にも比較的おすすめですよ。



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参考・引用文献
七訂食品成分表 女子栄養大学出版部
日本人の食事摂取基準 第一出版
新調理学 光生館
もっとからだにおいしい魚の便利帳 高橋書店
文部科学省食品成分データベース
北海道お魚図鑑
北海道公式ホームページwww.pref.hokkaido.lg.jp 水産統計
札幌市公式ホームページhttp://www.city.sapporo.jp/ アニサキスによる食中毒
NHK北海道NEWS WEB 閲覧(20190214)