水溶き片栗粉に関する素朴なギモン

かき玉スープ

水に溶けず底に沈む片栗粉


水溶き片栗粉をつくろうと思って、片栗粉に水を加えても、
片栗粉は水に溶けずに沈殿してしまいます。

加える前に、再度混ぜてから加えますよね。

なんで水に溶けてくれないんだろう。面倒くさいなー。手間だなーと思います。

しかし、汁ものに加えると、ちゃんと溶けて、汁ものに濃度もついてくれて、
めでたしめでたし、美味しいのができた~と思って、

片栗粉が水に溶けなかったなんて、そんな素朴なギモンは忘れてしまいますが、

片栗粉の性質を少しご紹介します。

デンプンの糊化

片栗粉だけでなく、コーンスターチも葛粉も、
小麦粉も冷たい水に加えても溶けずにそのまま底に沈んでしまいます。

(ただし、片栗粉などこれらのデンプンは、加熱していない生のデンプンであること)

生のデンプンが水に溶けない理由は、構造上、
デンプン粒の中に水が入り込む隙間が無いためです。

しかし、水を加え、更に熱を加えることで、デンプン粒が水を吸収し、膨潤します

熱のエネルギーが作用して、水が入り込む隙間ができるように、デンプン粒の構造が変化します。

熱を加え続けることで、デンプン粒はさらに膨潤していき、
液体は濃度の濃い(粘度が高い)状態になっていきます。

こんな風に、デンプンの粒が水を吸って膨潤し、糊状になること。
この糊状になったものが水に溶けて水分に濃度が付ことを「デンプンの糊化(α化)」といいます。

糊化する温度は、デンプンの種類によって変わります。

片栗粉は63.5℃なのに対し、コーンスターチは73.5℃と温度が高くなります。

天津丼

コーンスターチで汁ものに濃度、とろみをつけようと思うと

煮立たせる時間が長くなってしまったり、同時に加熱の時間も長くなってしまうため、

風味が飛んでしまうことも予想されます。

汁もののとろみ付け、麻婆豆腐やあんかけ焼きそばの粘度付けには、
片栗粉の方が適当といえるでしょう。


加熱しなくてもとろみがつくものもある

汁もののとろみといえば・・・

車いすおばあちゃん

飲み込む力が弱くなってきた高齢者の方が、
粘性の低い、食べものやサラサラした液体(飲みもの)を飲み込むときに、
むせてしまうことあります。

これは、飲み込む力が弱くなって、食べもの、飲みものが、食道に入らず、気管に入ってしまうためなのですが、食品の粘度も関係しています。

粘度が付いていると、飲み込むときに一旦口の中でまとまり、
のどの中に入るスピードが遅くなるため、食べものや飲みものが飲み込みやすくなります。

飲み込みが苦手になってきた人向けに、とろみ調整剤というものがあります。

このとろみ調整剤は、冷たい水にもさっととけて、とろみが付いてきます。

とろみ調整剤の主な成分はデキストリン

とろみ調整剤に含まれているものもデンプンの仲間です。

何でとろみをつけているかというと「デキストリン」が主なものです。

同じデンプンですが、水にみ溶けるのはなぜでしょうか。

デキストリンは、デンプンを無水状態で120℃~220℃に加熱することで
構造を変化させているため水に溶けることができます。

また、とろみ調整剤には食品添加物の増粘安定剤なども含まれているため、
安定したとろみをつけることができているんですね。


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参考・引用文献
新調理学 光生館
お菓子「こつ」の化学 柴田書店